数多くの漫画家がいて、様々なジャンルで面白い漫画を描いている。尊敬する漫画家は千差万別だろうが、私は“マンガの神様”と崇められる手塚治虫先生を特に尊敬している。ちなみに手塚先生は生前、“漫画”表記ではなく“マンガ”表記を好んでいたらしい。代表作に『ブラック・ジャック』『鉄腕アトム』,『火の鳥』,『ブッダ』,『ジャングル大帝』など、他にも数多くの作品がある。私はその中でも、『ブラック・ジャック』をバイブルにしている。
今日は秋田書店より出版された『BLACK JACK』第一巻より、「医者はどこだ!」について書いてみたいと思う。といっても、私ごときが手塚先生の作品を評することなどできないので、純粋な感想として書く。
「医者はどこだ!」は記念すべき初めのお話で、大実業家ニクラ氏の息子アクドが、オープンカーで暴走させて事故を起こして重傷を負う場面から始まる。ブラック・ジャックは“頭の骨が折れて、首が折れて、肺がつぶれて、胃がひしゃげて、うんちがはみだしている”アクドを「なおせる」と断言するが、別の肉体が必要だと告げる。その結果、偶々事故現場を見ていた仕立て屋のデビィが無実の罪で逮捕され、その日のうちに裁判で有罪となり、死刑が宣告され、手術が始まった。
ブラック・ジャックは手術前に「ひとついっとくが、ニクラさん、おれはそいつを助けるが、助けたあとは責任はおわないぜ」を告げ、デビィをアクドそっくりに整形するという手術をおこなった。包帯の取れたデビィは病室を抜け出して母親のもとへと戻り、ハサミの使い方を見せることで自分がデビィであることを証明し、ブラックジャックから貰ったお金で外国へ逃げるという結末になる。
このお話の最後は「ブラック・ジャック。日本人である以外、素性も名まえもわからない。だがその天才的な手術の腕は神業とさえいわれている。このなぞの医者は、きょうもどこかでメスを持ち、奇跡を生んでいるはずである」で締められていて、ブラック・ジャックをという人物を実に簡潔に表していると思う。本名である“間黒男”を表すとなると、これだけでは物足りないが、“ブラック・ジャック”を表すのであればこれで充分。なぜならブラック・ジャックという存在は読者の支持によって、連載につれて変化していったのだから。数回の連載で終わるはずだった物語が、ここまで人の心を惹きつけるものとなった。私はそこに夢を感じる。いつかそんな物語を完結させたい。
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